さらば更新うどん 下

小倉の更新うどんは、いつ行っても安定のおいしさだった。量も多めだったから、多少大食いめの身にはうれしく、小倉を訪れる際には多少遠回りをしても立ち寄るのが常だった。勤務地が山口・下関になったときには、本来なら持ち場を勝手に離れてはいけないのにどうしても味が忘れられず、海峡をこっそり越えてほぼ毎週通ったものだ。

だが、いつしか営業時間が短めになり、休みでもないはずの曜日に休むようになった。店には「店主病気のため」との張り紙が。「大将、からだ壊したのか……」と心配はしていたのだが、とうとう亡くなっておられたのだ。あの味がもう味わえないのかと思うと、呆然としてしまう。

店が休みがちになったころから、どこか他に同じ味がないかと探したが、難しかった。スティック状のごぼう天うどんはほかにもあるのだが、ダシがどうしてもとがった味だったり、麺がただのやわやわなだけだったりして、やはり物足りないのだ。更新うどんは、唯一無二の味だった。

遅めの午後に店に行くと、店主がカウンターの端っこで、遅い昼食をとっておられるのに鉢合わせることがあった。いつも、自前のうどんを食べておられた。きっと、ご自身が本当にうどんが好きだったのだろう。だからこそのあの味だったのだろう。もはや更新うどんのあの味は、思い出の中でしか味わえない伝説になってしまったのだと思う。

 

 

ほかに好きなうどん屋

・牧のうどん

 北部九州に展開するチェーン店。注文すると追加用のだしがやかんで運ばれてくるのもこの店ならでは。時間がたつにつれ麺がだしを吸うため、「食べても食べても麺が減らず、むしろ増えていく無限地獄」と笑いのネタにされることも少なくない。麺の固さを指定できるので、「かた」麺で注文し、麺がだしを吸う前に食べてしまうのが好きだった。

・かかしうどん祝町店

 更新うどんと同じスティック状のごぼう天うどんがある。量が多めなのも似ており、ここで大盛りを頼むと「前に大盛りを頼んだことがありますか」と聞かれる。知らずに頼むと驚かれたり残されたりするからだろう。ただしだしは更新に比べやや味が濃いめ。また、注文するとまずおろし金と大根の切れ端が出てきて自分で大根おろしをつくりながら待つことになる「しょうゆうどん」も好きだった。

・はるやうどん

小倉の魚町商店街の中にある老舗のうどん屋。メニューがかやくうどんと肉うどんしかない。麺はやわやわだが、だしが安定のうまさ。

・王司パーキングエリアのうどん

ここも特別なうどんではないのだが、どこか懐かしくなって食べたくなる。

・おにやんま新橋店

勤務地が東京だったころ足繁く通った。とり天としょうゆうどんのセットが私の定番だった。歯ごたえのある麺がうまい。

更新うどんのかも南うどん